てれてれ日記

子育て、日々のライフハック?的な内容です。

【ブックレビュー】メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語

ご無沙汰しております。

よもやよもや1年以上続くと思っていなかったコロナ禍のGW、ほしいものリストにたまっていた本の1つ、「メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語」を読み終えました。

オバマ元大統領推薦の言葉

「同じシングルペアレントの経験を持つ私は、子どもを守るために、自分以外、誰にも頼ることができない、という孤独感の切実さに激しく共鳴した。
これから本書を読む方は、著者はどんなに強い女性なんだろう、と思われるかもしれないが、彼女は精神的にも、肉体的にも、人と比べて強靱だったわけではない。そうせざるを得なかった、というのが正しい。(後略)」

 

概要は

・高等教育を受けていない28歳の女性が、暴力的な夫から逃れ、親も貧乏で頼ることができず、ホームレス・シェルターで子育てを開始する。

・日々生きていくために、メイドとして最低賃金の時給で人の家のトイレを掃除し、そのために熱が出ていても子供を託児所や元夫に預け、自分も痛み止めを飲みながら綱渡りで仕事をし、夜は大学の学位を得るために勉強する。

・ギリギリの暮らしの中、ハウスオーナー達の留守の間に掃除をする幽霊のような存在である自分自身、自堕落な同僚、生活保護を受ける者への差別的な発言(私が税金を払っている、生活保護を受けているのに子供がおめかししたりオーガニックフードを買っている等)ことに精神を削られる

・そんな中でもブログで日々を綴り、心あるハウスオーナーとの交流を通じて自身の作家になる夢に実現に向けて進んでいく・・

 

といったお話。

最低賃金で赤子を抱えて最低賃金でメイド業を綱渡りで行う作者が
自分をとりまく事件や感情を日々言語化していく姿にハラハラしたり、安堵したり。彼女が前を見続けられたのは、母親として自分と娘の生活を守り続ける覚悟と、誇りを失わず情報を得て行動し、文章にし続けたからと感じました。

生々しい感情や事件も満載なので、心を揺さぶられたい方はぜひ本を手に取ってみてください。

 

私もほぼワンオペで乳幼児を育て、今もワンオペだけれども、やはり本当に一人であることの重みは当たり前だが全く違う。そして、最低賃金で子育てしていくことも。

これを読んでも完全にその立場を理解することにはならないだろうが、それでもその状況にいる人の内面や環境を知ることができてよかった。

 

以下は私が反応したポイントです。

 (共感性ゼロな自身の立場からですがご容赦を・・)

 

「ただ一人、隠しカメラをつけているというオーナーに仰天した」

というくだり。日本人はメイドを家に入れることに慣れておらず、ましてや留守中に家に入れることに相当抵抗がある。私が東南アジアで暮らしていた時も、留守中には掃除メイドを入れないという日本人家庭が多かった。

そして、私が週1で雇っていたフィリピン人メイドさんは同じマンション知人宅で毎回現金を盗んでおり、確信を得た知人がカメラを仕掛け、結局警察を呼ぶことになったのだった。

彼女は夫は働き娘は大学に行っており、決してギリギリの貧困層ではないのだが、それでも、私が彼女から感じたのは初回の「仕事を得るために媚びを売る表情」と、「ハウスオーナーに対する憎しみ」だった。今から思えば、だけど。

信頼を得ているメイドさんもたくさんいるのだけど、人のトイレを掃除するという仕事から、それを頼んでいる人への憎しみはあっても不思議でない。

私も絶対に同じ立場に立ってはいなかったのだろうし、完全に信用もできなかった・・・

・と思っていたら、巻末の渡辺由佳里さんの解説に関連する記載があった。

アメリカで渡辺さんがトイレ掃除をしていたら、娘の友達に「あなたの家、貧乏なの?」と聞かれた。経済的に成功した白人女性はハウスキーパーを雇っている。

ー周囲の白人女性の発言の端々からは「経済的に成功した女は自分でトイレ掃除をするべきではない」という考え方が滲みだす。また、(有色人種や移民女性であるメイドたち)に対する白人のクライアントの態度には、テレビや映画でみるイギリス貴族のような横柄さがある。

ー「トイレ掃除からの解放」は欧米の女性には「抑圧されてきた女性のステレオタイプからの解放」かもしれないが、押し付け先が有色人種や移民、予期せずシングルマザーになった本書の女性など 仕事の選択肢がない女性たちになっている。

 

アジア人でも露骨にメイドを差別する人もいたし「トイレ掃除!?やったことないわwww」って笑うマダムもいた。自分自身、「誠意をもってメイドさんに接することと、仕事の質を期待値通りにやってもらうよう伝えること」の加減は結構難しかった。

でも盗難は普通に気を付けるけどなぁー。というわけで私は留守宅に掃除してもらうのは性に合いません(笑)

 

「クライアントの多くが、私が憧れとともに思い出すもの(刈り込まれた芝生、ブランコのある大きな木、犬、たくさんのバスルーム)を持っていたが、彼らは人生を楽しんではいなかった。

長時間働き、長距離を通勤し、ほぼ全員が鬱や不安、痛みを和らげる睡眠補助剤を持っていた。」

「健康的な食べ物やジムの会員権や医師は人間を健康にし、元気にしてくれるものだと思っていた。もしかしたら、二階建ての家を維持すること、うまくいかない結婚生活、壮大な幻想を維持することは、彼らのシステムに大きな負担をかけるのかもしれない。貧困が私に同じ負担をかけていたように。

存在しない幽霊のように留守宅を掃除し、彼らの汚れたティッシュやトイレを片付けながら、大きな家の持ち主の夫婦関係が破綻していたり、疲れていたりする様子をうかがう作者。800万円以上の収入になると幸せと収入は相関がなくなるといいますが。

 

でもアメリカの家ってどんなのが平均的なんでしょう。ぐぐってみると、2019年時点で2800万円で買える家は、田舎だと「絵にかいたようなアメリカンドリーム」な広い家、でもシカゴやサンフランシスコだと小さな家、NYだと48㎡でした。

そして、コロナ禍でさらに住宅は供給不足になっているようで、日本と同様郊外と地方の住宅価格が上がり続け、海外旅行に行けないお金持ちはフロリダやリゾートに豪邸を買い、現在18歳から29歳の若者の52%が親元に戻って同居しているとか。(大学休校、仕事リモートワークの飲み会禁止じゃ都会に住む意味ない・・確かに)

コロナ禍でも価格上昇!?アメリカ住宅価格が値上がりを続ける「特殊事情」【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(23)|FINDERS

完全に脱線してしまいました。

・「私には途方もないほど重い責任があった。

ごみを出す。食料品店で選んだ食品を家に持ち帰る。料理する。掃除する。トイレットペーパーを補充する。ほこりを払う。車のオイルチェックをする。ミアを医者や父親のところまで送り届ける。(中略ぐるぐる回るミアを、飛び回るミアを、滑り台を滑るミアをすべて観察する。ブランコに乗った彼女を押すのは私で、夜、寝かしつけるのは私で、眠りにつく彼女にキスをするのも私だった。」(この先には支払いの心配をして胃が痛くなる記述が続く)

 

私も38度7分でも車をぶつけながら子供をお迎えにいったり、その足でご飯を食べさせ、お風呂に入れ、寝かしつけていた。

それでも、休みを取ると有給休暇はもらえたし、ストレスは体力的なしんどさと、余裕のなさ、そして夫婦なのに私だけがこの重圧をフルタイム仕事と両立しなければならない理不尽さへの怒りだった。

生きていくための必死さではない・・。 

  僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」の感想にも通じるけれど、自分を含めた世の中、人種や性別、国籍のダイバーシティに比べると縦のダイバーシティに踏み込んでないかも。自分自身も、テーマとして温めていこうと思います。